Web3.0でできることや活用事例、メリット・注意点について紹介

Web3という言葉は、新聞やテレビでよく目にする用語だと思います。

しかし、具体的にどういったものなのか、そして自分にどう関わりがあって役立つものなのか、よくわからない人も多いでしょう。

結論から言えば、Web3は「分散型」の次世代インターネットとして注目されており、今までのインターネットの常識を大きく変える概念と言えます。

Web3の具体的な活用事例は以下のとおりです。

  • NFT(非代替性トークン)
  • DAO(分散型自律組織)
  • DeFi(分散型金融)
  • メタバース(仮想空間)
  • 仮想通貨(暗号資産)

これらの活用事例は、Web3のメリットを最大限生かされることによって、利用者である私たちがビジネスシーンだけでなく日常においても多くの利益を享受できるサービスです。

この記事を読むことで、「Web3.0とは何か」「Web3とブロックチェーンの関係性」「Web3.0のメリットと注意点」が分かり、Web3.0でできることや具体的な活用事例、ビジネスモデルやサービス事例を知ることができます。

Web3.0とは

Web3.0とは、インターネット上の進化の過程で使われる言葉であり、概念と言えます。

Web3.0は「セマンティックWeb」という概念を表す言葉と言われています。

「セマンティックWeb」とは、メタデータと呼ばれる「データを説明するためのデータ」をWebサイトに付与することによって、人間だけでなくコンピュータなどのソフトウェアもWebサイトを理解できるようにしていこう、とする概念を表します。

例えば「中野のスパゲッティ屋」という言葉をWebサイトで見かけたとします。

「中野のスパゲッティ屋」と一言で説明しても、意味が以下のような可能性があります。

  • 東京都中野区にあるスパゲッティ屋
  • 中野さんというオーナーが経営しているスパゲッティ屋
  • 「中野」という店名のスパゲッティ屋

人であれば、前後の文脈などからどの「中野のスパゲッティ屋」か分かりますが、コンピュータなどのソフトウェアでは理解できません。

これを解決するのが、メタデータを駆使してソフトウェアでも理解できるようにする「セマンティックWeb」という概念です。

また、Web3.0の大きな特徴として言えるのは「分散型のインターネット」という部分です。

これまでは、ある特定の事業者が提供するサービスを介してインターネットを利用してきました。

しかし、Web3.0ではブロックチェーンという技術を活用して、個人のデータを自分で所有・管理していくことで、透明性の高く安全な「非中央集権型ネットワーク」を目指した概念と言えます。

ここからは、Web3.0をより理解するために旧来のWeb1.0やWeb2.0との違いや、よく目にするWeb3とWeb3.0の違いをそれぞれ説明します。

Web1.0、Web2.0との違い

まずは、以下に旧来のWeb1.0、Web2.0とWeb3.0のそれぞれの特徴をまとめました。

特徴

Web1.0

  • 一部の企業や個人のサイトを見るだけ
  • Eメールに代表されるテキストベース
  • 情報が一方向

Web2.0

  • プラットフォーマーのSNS
  • 個人間の双方向コミュニケーション
  • 通信速度の高速化による画像や動画ベース
  • 中央集権化による個人情報へのリスク

Web3.0

  • ブロックチェーン技術を利用した個人情報の分散管理
  • プラットフォーマーの不要
  • 非中央集権下による人種や国境を超えたコミュニケーション

以上の特徴から、それぞれを簡単に説明すると以下のように説明できます。

  • Web1.0は情報の「閲覧」
  • Web2.0は情報の「交換」
  • Web3.0は情報の「共有」

今後はさまざまな場面において、Web3.0の活用がとても注目されています。

Web3との違い

Web3.0とともに目にするのが「Web3」。

この2つはどう違うのでしょうか?

Web3とは、Web3.0が目指す「セマンティックWeb」を構築するための代表的な技術の1つです。

Web3を代表する技術には以下のようなものがあります。

  • NFT(非代替性トークン)
  • DAO(分散型自律組織)
  • DeFi(分散型金融)
  • メタバース
  • 仮想通貨

このようにWeb3.0とWeb3は厳密に違いがありますが、実態としてはほとんど同じ意味として使われています。

Web3とブロックチェーンとの関係性

Web3.0を語るときに外せないものが、ブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンとは、各取引の記録をハッシュ計算されたブロックに詰めることによって履歴の改ざんを難しくして、1本のチェーン上につないでいく技術のこと。

この技術を利用することによって、個人のデータを多くの人で分散して所有・管理できるので、情報の改ざんや漏洩の心配がなくなるというわけです。

Web3.0でできること・具体的な活用事例

Web3.0の具体的な活用事例は以下のとおりです。

  • NFT(非代替性トークン)
  • DAO(分散型自律組織)
  • DeFi(分散型金融)
  • メタバース
  • 仮想通貨

それぞれ説明します。

NFT(非代替性トークン)

NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で非代替性トークンを意味します。

トークンとは「価値」のことで、つまり「替えがきかない」世界で唯一の「価値」を持つモノを指します。

これまで、デジタルの画像や音声などは同じものを簡単にコピーできました。

しかし、このようなデジタル資産にコピーや代替できないような価値を付けて、インターネット上で取引できるような資産にする技術がNFTです。

例えば、ゴッホが描いた『ひまわり』という絵画作品は世界に1つしかないもので、1987年に損保ジャパン日本興亜が最終購入額58億円(当時)で落札して、現在東京にあるSONPO美術館に所蔵されています。

これと同じような事例が、NFTでも実現しています。

Beepleというアーティストの『Everydays: The First 5,000 Days』というデジタルアート作品が、NFTとしてオークションにかけられて約6,900万ドル(約75億円)で落札されました。

このようにNFTは、画像や音楽だけでなく、ボイスメッセージやSNSへの投稿メッセージなど、あらゆるデジタル資産をブロックチェーン技術によって唯一無二の価値を付加することによって、インターネット上で盛んに扱われています。

DAO(分散型自律組織)

DAOは、「Decentralized Autonomous Organization」を略した用語で分散型自立組織と訳されます。

DAOには以下の特徴があります。

  • 創設者や管理者に権限が集中せず、分散している
  • 参加者は平等に意思決定される
  • 年齢や性別、国籍など関係なく世界中のだれもが参加できる
  • 意思決定や取引は全てブロックチェーンでおこなわれるので、透明性があり不正や改ざんが難しい

例えば、仮想通貨であるビットコインも代表的なDAOの1つです。

創始者である「サトシ・ナカモト」は存在自体が不明であり、またビットコインの管理者もいません。

ビットコインは、多くの人によって分散管理された通貨となります。

取引はブロックチェーンでおこなわれており、取引をチェックする計算に成功した人が報酬としてビットコインを受け取る、という仕組みを自動で動き続けています。

DeFi(分散型金融)

DeFiとは、Decentralized Financeを略した用語で、「分散型金融」と訳されます。

銀行をはじめとした中央管理者を必要としない、個人が直接取引できる分散型の金融システムです。

中央管理者を通さないため手数料が安かったり、本人確認なしで始められたり、入出金が短時間で完了したりといったメリットがあります。

個人で管理するためのウォレットを開設することで、誰でもすぐに金融取引を始められます。

以下の金融サービスを利用して、利回りを得られるので特に人気のシステムです。

  • イールドファーミング(保有してブロックチェーンネットワークに参加する見返りとしてD利息を受け取る運用)
  • ステーキング(DeFi取引所に預けて利息を受け取る運用)
  • レンディング(貸し借りをおこなうことで利益を得る運用)

DeFiを利用することによって、銀行などの仲介業者を通すことなく、個人間で金融取引をおこなえるようになったのです。

メタバース

メタバースとは、いわゆる仮想空間のことを指し、現在では現実世界のサービスと連動して活用されているものです。

メタバース上に用意された街や世界で、個人の分身であるアバターを使って色んな体験が可能です。

  • コンサートや展覧会
  • アパレルブランドのショップ経営
  • 会議室
  • 大学やスクール
  • 島や国

近年のコロナ禍でメタバースが経済圏として大きく成長していて、一般社会にも浸透してきつつある分野と言えます。

仮想通貨

仮想通貨とは、SocialToken(ソーシャルトークン)と呼ばれるもので、簡単に言えばインターネット上で構築・使用されるお金を指し、暗号資産とも言われています。

世界的に流通しているビットコインやイーサリアムは、代表的な仮想通貨です。

Web3.0のサービスを利用するときは、自分でウォレットを作成して仮想通貨を所持していないと利用できません。

ビットコインやイーサリアムなどは、世界的にも認められた通貨ではありますが、急激な価格変動や各国の法整備が追いついていないことが課題になっています。

Web3のビジネスモデル

Web3を活用したビジネスモデルは以下のとおりです。

  • 金融業界
  • ゲーム業界
  • 広告業界

それぞれ説明します。

金融業界

Web3が活用されているビジネスモデルの1つが金融業界です。

DeFiに代表される仮想通貨での取引や、デジタル資産への投資、保険や取引所といったプラットフォーム事業がビジネスモデルとして挙げられます。

将来的には、NFTに代表されるデジタル資産や不動産、高級車といった非金融商品への投資も期待されています。

ゲーム業界

Web3.0の活用がもっとも活発なのが、ゲーム業界です。

ゲーム業界におけるビジネスモデルには以下の特徴があります。

  • ゲーム内で得たアイテムがデジタル資産になる
  • ゲーム内の取引は改ざんが難しく透明性がある
  • ゲーム内で得たアイテムは自由に売買ができる

ゲームに参加し貢献することによってアイテムなどのデジタル資産やNFTが手に入るため、ゲームするだけで稼げる「Play to earn」の仕組みが構築されており、現在、参加者が拡大しています。

広告業界

広告業界でも、Web3.0が活用されています。

Web2.0では、検索結果や購入履歴などの個人情報に基づいた広告表示がされます。

しかし、Web3.0では広告表示を閲覧したり、または閲覧を拒否したりといったことを個人が選択できるようになりました。

そのため、広告を見てくれた人に仮想通貨やNFTを配布するといったマーケティング手法が活用されています。

Web3.0のサービス事例

Web3.0を活用したサービス事例は以下のとおりです。

  • Brave(ブレイブ)
  • OpenSea(オープンシー)
  • My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)

それぞれ説明します。

Brave(ブレイブ)

Brave(ブレイブ)は、Google Chromeに対抗するために開発された次世代型高速Webブラウザです。

Web2.0におけるこれまでのブラウザよりも、個人情報の保護が強化されているのが最大の特徴です。

例えば、検索結果や閲覧履歴などの個人データに基づく広告をブロックできます。

また、広告表示を許可した場合は、BATという仮想通貨を報酬として受け取れます。

このように、広告表示を個人でコントロールしたり、見るだけで稼げたりといった新しい次世代プラットフォームと言えるでしょう。

OpenSea(オープンシー)

OpenSea(オープンシー)は、音楽やアート、キャラクターやゲーム内で得たアイテムといったNFTコンテンツを取引できる世界最大級のマーケットプレイスです。

NFTコンテンツを誰でも簡単に売買できます。

OpenSea(オープンシー)内での個人間取引は、従来の決済方法が必要なく、ウォレットを連携させるだけで完了できます。

イーサリアムやKlaytnなど、複数のブロックチェーンに対応していることが、OpenSea(オープンシー)をはじめとするNFT市場を活発化させている要因と言えるでしょう。

My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)

My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)は日本で開発されたNFTゲームです。

課金して得られるキャラクターやアイテムがデジタル資産として保証されたり、ゲームをプレイしながら仮想通貨が稼げたりして、とても注目されています。

手に入れたキャラクターやアイテムは、OpenSeaなどのマーケットプレイスで売買もできます。

Web3.0が注目されている背景

現在、Web3.0が注目されている背景には以下の2つが存在します。

■個人による個人情報の管理

Web3.0では、個人情報をブロックチェーン技術によって分散管理しています。

そのため、一方的なアカウントの停止や情報の漏洩といった心配がなくなることに大きなメリットがあるため、とても注目されています。

例えば、Amazonなどのプラットフォームで購入した音楽や書籍データは、プラットフォーム側で消去してしまう可能性は否定できません。

しかしWeb3.0ではブロックチェーン技術による分散管理のおかげで、個人でデータを管理できるので消去される心配はなくなるわけです。

■唯一性を証明できるNFT技術

NFTでは替えがきかないという価値を証明できるので、イラストや音楽、ゲームなどの制作物を管理したり売買したりできます。

コピーや改ざんができないことから、NFTデザインのアーティストから特に注目されていると言えます。

Web3.0を活用するメリット

Web3.0を活用することによって、私たちが得られるメリットは以下のとおりです。

  • セキュリティが向上する
  • 仲介業者が不要になり手数料がかからない
  • グローバル化に適している
  • 言論の自由

それぞれ説明します。

セキュリティが向上する

Web3.0を活用すると、インターネット上のセキュリティが向上します。

なぜなら、Web3.0はブロックチェーン技術で成り立っており、透明性があり安全性が高いので改ざんや情報漏洩の心配がないからです。

Web2.0では、個人情報はプラットフォーマーに集約されています。

そのプラットフォーマーがサイバー攻撃などを受けてしまうと、個人情報が漏れたり改ざんされたりする可能性があります。

しかし、Web3.0ではブロックチェーン技術を活用しているので、個人データが分散されています。

そのため、改ざんや情報漏洩の心配がないのです。

さらにWeb3.0では、個人のメールアドレスやパスワードなどの登録は基本的に必要ありません。

そのことが、結果としてセキュリティ対策になっています。

仲介業者が不要になり手数料がかからない

Web3.0では、仲介業者がいないので、手数料がかからないことも大きなメリットの1つです。

Web2.0では、デバイスからサーバーへアクセスすることによって様々なWebサービスを利用しています。

そのため、サーバーを扱う仲介業者への手数料が発生していました。

しかし、Web3.0ではP2P(ピアツーピア)と呼ばれる技術によって、仲介業者を通さずに個人間で直接やり取りができます。

P2Pとは「Peer-to-Peer」の略で、サーバへアクセスすることなく不特定多数のデバイスで、データなどを直接やり取りできる技術のことを指し、身近なものだと「LINE」もこの技術を活用しています。

そのため、仲介業者が不要となり、手数料がかからずサービスが利用できるのです。

グローバル化に適している

Web3.0は、グローバル化に適していると言われています。

DApps(ダップス)と呼ばれる分散型のアプリケーションを利用することによって、人種や国境を越えて世界中のサービスを利用できます。

また、匿名で利用できるので、国や企業の規制を受けないことも含めて、Web3.0はグローバル化に適しています。

言論の自由

Web3.0では自由に発言が可能であり、自由な表現ができます。

Web2.0では、プラットフォーマーに都合の悪い発言や表現があると一方的に規制をかけられてしまうことがありました。

例えば、アメリカのトランプ前大統領は「暴力行為をさらに先導する恐れがある」として、X(旧Twitter)のアカウントを凍結されていた事例があります。

しかし、Web3.0ではプラットフォーマーのいない分散型のインターネットのため、個人の発信に対して監視や規制がないので個人情報を守り、発言や表現が自由に行えるのです。

Web3.0の注意点

Web3.0を活用することによってとても便利になりますが、以下のような注意点があります。

  • リテラシーがないと理解しづらい
  • 管理者がいないためトラブルは自己責任になる
  • 法整備が間に合っていない

それぞれ説明します。

リテラシーがないと理解しづらい

Web3.0では、インターネットやITに対してのリテラシー(その分野に関する知識やスキルを適切に理解・活用すること)がないと理解しづらい部分があります。

Web3.0で根幹となるブロックチェーン技術や、サービスを利用する際に必要になる仮想通貨の知識や理解がないと、Web3.0を実際に活用するのは難しいと言えます。

仮想通貨を購入することさえも、インターネットやITのリテラシーが低い人にとっては難しいでしょう。

Web3.0を普及させるためには、こういったリテラシーの低い人や初心者の人に対して分かりやすく利用できるような仕組み作りが急務と言えます。

管理者がいないためトラブルは自己責任になる

Web3.0には、プラットフォーマーという管理者が不在のため、トラブルがあった時は自己責任になってしまいます。

Web2.0では、何かトラブルが発生したときはプラットフォーマーや仲介業者が対応してくれました。

例えば、ログインするのにパスワードを忘れてしまった場合に再発行してくれたり、決済の時にトラブルが発生した場合に救済してくれたりします。

しかしWeb3.0では管理者がいないので、トラブルがあったら自分で対処しなければなりません。

登録やパスワードなどの面倒な部分が解消される代わりに、個人情報は自分で守るというマインドと知識、スキルが必要というわけです。

法整備が間に合っていない

Web3.0はまだまだ新しい概念のため、法整備が整っていないことも注意しなければなりません。

仮想通貨やNFT、メタバースといったモノに対して法整備がされていないので、一般社会に浸透するにはまだまだ時間がかかると言われています。

例えば、仮想通貨を使って行われた取引に対しての税制面や、どの国の法律を適用させるのかなどの課題が浮き彫りとなっています。

日本の国会でもようやく議論されるようになってきたので、今後に期待しましょう。

Web3.0の動向

まだまだ成長過程にあるWeb3.0ですが、今後どのような未来が待っているのでしょうか?

■日本の文化とWeb3.0のマッチング

日本を代表する文化であるアニメやゲームは、Web3.0ととても相性が良いと言われています。

アニメーション技術を利用したNFTや、ゲーム内で得られるアイテムのNFTによる取引などが盛んになれば、この分野において国際競争力やポテンシャルが高い日本は、世界をリードする存在に成り得ます。

■日本人のITリテラシーの低さがWeb3.0にどう影響するのか

日本人は他の国に比べて、インターネットやITに対するリテラシーが低いと言われています。

諸外国がWeb3.0を扱ったサービスやビジネスを推進している中で、日本はインターネットやITへの知識が低いため、このままでは取り残されてしまう危険性があります。

一般社会への浸透だけでなく、子どもへの教育面からより積極的に進めていく必要に迫られているといえるでしょう。

■仮想通貨やNFTに対する法整備の加速

先ほど挙げたように、日本では仮想通貨やNFTに対する法整備がまだ進んでいません。

インターネットやITの技術革新のスピードは目覚ましく、日本においても少しでも早く法律を整備していかないと、様々な問題やトラブルが増えてきてしまいます。

日本国内や国際社会における法整備を進めていくことが、Web3.0の普及に影響してくると言っていいでしょう。