観光コンテンツマーケティングとは?具体例や成功するためのポイントを紹介
コンテンツマーケティングとは
企業などがコンテンツを使ってマーケティングをすることを、コンテンツマーケティングといいます。
文章、画像、動画、商品・サービス情報、ホワイトペーパー、ニュースなどのコンテンツは消費者や顧客、見込み客などの興味を引く力を持ちます。そのためコンテンツは、企業の商品・サービスを宣伝するときに有効です。
また企業は、コンテンツを宣伝以外の目的に使うこともできます。純粋に娯楽として楽しめる動画や、自社が所属する業界の興味深い情報を提供すれば、不特定多数の人を惹きつけることができます。良質なコンテンツを発信している企業は、消費者から信頼されたり愛着を持たれたりするでしょう。この効果は企業のブランディングに役立つはずです。
マーケティングではコンテンツ以外に広告も使われるわけですが、広告は自社商品・サービスの良さをストレートにアピールできる点は良いのですが、消費者が迷惑に感じることもあります。一方のコンテンツは、信頼や愛着の獲得、ロイヤリティやブランドの確立といった過程を経て、自然な形で自社商品・サービスを知ってもらうことができます。
観光マーケティングの現状
観光業に携わる企業や団体、自治体などが、観光客を増やす目的で行う観光マーケティングは日進月歩で進化しています。現状の日本の観光マーケティングは成功しているといえるでしょう。
成功といえるエビデンスの一つが訪日外国人(インバウンド)数で、2023年12月は2,734,000人となりコロナ前の2019年同月を超えました。2023年の訪日外国人数の累計は25,066,145人で、2019年比で8割まで回復している状況です。
訪日外国人は購買力(いわゆるお金を落とす力)が強いので、現状の観光マーケティングでは外国人観光客をターゲットにした施策が目を引きます。地方の観光業企業などは「知られざる日本」の情報を海外に発信して集客を図っています。また、SNSを使ったビジュアルに訴える観光PR動画や外国語でのおもてなしなど、観光マーケティング・ツールの進化は目覚ましいものがあるといえるでしょう。
ただ観光ビジネスには課題もあって、人手不足や宿泊施設不足でせっかくのチャンスを活かしきれていないところがあります。また、一気に脚光を浴びて大量の観光客が押し寄せ、地元の人が迷惑するオーバー・ツーリズムも社会問題になっています。
観光マーケティングは今後、より一層観光地の魅力を高めて集客効果を上げていく一方で、持続可能な観光ビジネスの構築や地域を潤す施策が必要になるでしょう。
観光マーケティングの施策例
観光業企業のPR担当者や企画担当者のなかには、「何をすればお客さんが来てくれるのか」と悩んでいる人もいるでしょう。
そこで観光マーケティングで実施されることが多い施策として以下の4つを紹介します。
Web広告
Web広告はWebサイトやSNSなどのインターネット上のコンテンツやツールに出稿する広告のことです。観光業企業などの観光マーケティングでWeb広告が有効になるのは、観光客がインターネットを多用するからです。観光客はホテルの予約、訪問地探し、飲食店の評価、地元の人との交流にインターネットを使うので、Web広告は観光地のPR効果をあげやすい施策といえます。
観光業企業などが観光マーケティングで広告を検討するとき、その選択肢にWeb広告を入れたほうがよいでしょう。
SNS
観光業企業などがSNSで情報発信をすると、観光客にダイレクトに訴求することができます。
例えば広告の場合は、観光情報は、観光業企業→広告代理店→広告制作会社→広告媒体→観光客というふうに流れますが、SNSなら観光業企業→観光客となり間をカットできます。
またSNSが双方向メディアである点も、観光マーケティングに効果的です。観光業企業などはSNSでの交流を通じて、観光客からダイレクトに、かつライブで感想などを聴くことができます。
オウンドメディア・SEOメディア
オウンドメディアとは、企業などが自分たちで構築する、自分たちのためのメディアです。観光業企業などがオウンドメディアを持つことで、観光情報の発信がより確実になります。旅行を計画している人が、ある観光地の情報を探しているとき、その観光地の観光業企業や自治体などがオウンドメディアを持っていれば、たっぷり情報提供できます。
また、観光業企業や自治体などがオウンドメディアを持てば、従業員や職員たちに「たくさん情報を集めてどんどん発信していこう」という気運が芽生えるでしょう。
SEOとはサーチ・エンジン・オプティマイゼイションの略で、検索エンジン最適化と訳します。Webサイトを検索上位に表示させるための取り組みがSEOで、SEOを施したメディアがSEOメディアになります。
企業などがオウンドメディアを開設したら、次はそのメディアにSEOを施していきましょう。SEOを実施してオウンドメディアが検索上位表示されることで、観光客から頼りにされる情報源になることができます。
口コミ収集
観光客が旅先で良い思いをしたら、誰かに「すごく良かった」と伝えたくなります。その逆に観光地で不快な体験をしても、誰かに伝えたくなります。
したがって観光マーケティングでは、こうした良い口コミも悪い口コミも地道に集めていくことが重要です。
良かったという口コミを集めることで、何が観光客に受け入れられるのかがわかります。その情報は、まだ観光客を集めることができていない観光地や観光施設の参考になるでしょう。
手厳しい口コミは改善に役立ちます。
良い口コミを増やし、悪い口コミを減らすことで、観光マーケティングが成功に近づきます。
観光業界でコンテンツマーケティングを成功させるコツ
観光業企業や自治体などがコンテンツマーケティングを成功に導くコツには次の6点があります。
- コツ1:ターゲットを設定する
- コツ2:観光客の行動パターンを分析する
- コツ3:求めている観光コンテンツを制作する
- コツ4:KPIを設定する
- コツ5:記事コンテンツを制作する
- コツ6:効果測定・分析を繰り返す
どれも観光コンテンツマーケティングにとって重要な要素なので一つずつ解説していきます。
ターゲットを設定する
コンテンツは読み手や視聴者が存在して初めて成立するので、観光コンテンツマーケティングでも、コンテンツのターゲットをしっかり設定しましょう。
もちろん観光業企業としては、老若男女を問わず幅広くお越しいただきたい、と思うでしょう。しかし実際は、若い人は多く訪れるが高齢者は苦手にする場所や、特定の層しか訪れない観光地といった場所が存在します。
そのため観光コンテンツマーケティングでは、まずは狭い層をターゲットに定め、その層に属す人たちに向けてコンテンツを仕掛けるようにしましょう。
観光客の行動パターンを分析する
観光客は一般的に一定の行動パターンを持ちます。最もわかりやすい行動パターンは、年末年始やゴールデンウイークなどの長期休暇を取りやすい時期に旅行をすることです。しかしターゲット層ごとに観察すると、それぞれの行動パターンはかなり異なります。
例えば、同じ場所を複数回訪れる人、違う場所を転々とする人、人混みを好む人、自然を好む人、日帰り旅行をする人、遠くまで足を伸ばす人などです。
行動パターンは数値化していきます。観光客の性別、年齢、住所、同伴者の属性、観光目的、観光地の満足度などをデータにすることで、観光客の行動を見える化することができます。
求めている観光コンテンツを制作する
観光業企業などが自分たちの観光地を訪れる観光客の行動パターンをとらえることができたら、それに合わせて観光コンテンツをつくっていきます。
例えば、観光客が景勝地に満足していたら、その場所の写真や動画を、観光地をPRするWebサイトに掲載することができます。観光客が地元グルメを楽しみにしていることがわかったら、飲食店情報をSNSで発信することができます。
KPIを設定する
キー・パフォーマンス・インディケーター(以下、KPI)は重要業績評価指標といい、要するに数値目標です。
観光コンテンツマーケティングでKPIを設定する意義は、目標達成度を見える化することにあります。観光コンテンツマーケティングではコンテンツを次々打ち出していくわけですが、事前にKPIを設定しておくと、観光客に提供したコンテンツが効果を生んでいるかどうかがわかります。
観光コンテンツマーケティングのKPIになるのは、コンテンツの利用数、コンテンツの閲覧数、コンテンツの評価、コンテンツによる行動変化の度合いなどです。KPIは観光コンテンツマーケティングを実施する主体が自由に決めることができます。
記事コンテンツを制作する
観光コンテンツマーケティングで重視したいものの一つが記事コンテンツ、つまり文章でつくる情報です。もちろん写真や動画といったビジュアル系も重要なコンテンツですが、観光客を納得させるのはやはり文章です。
観光コンテンツマーケティングを担当する人は、観光地やアクティビティ施設、地域の有名飲食店などを説明する文章を作成していきましょう。住所、面積、連絡先、特徴、料金、目玉、特徴、評価などを文章化することで、観光基礎情報を構築できます。
観光基礎情報それ自体も観光コンテンツになりますが、ビジュアル系コンテンツをつくるときも観光基礎情報を活用することができます。
効果測定・分析を繰り返す
観光コンテンツマーケティングでコンテンツを発信できたら、その効果を測定して、分析します。効果測定はKPIをチェックすることになります。例えばKPIの達成度を0~100点で評価します。
分析でもKPIを使います。KPIの達成度が高い理由と低い理由を探すことで、良い点を伸ばし、悪いところを潰すことができるからです。
例えばKPIが全体的に低ければ、ターゲットの設定が間違っていたのかもしれません。その場合、ターゲットの設定からやり直すことになります。
観光業界マーケティングの成功事例
観光業界のマーケティングに成功した、次の3つの事例を紹介します。
- 事例1:長野県諏訪市
- 事例2:熊本県人吉球磨地域
- 事例3:岐阜県下呂温泉
長野県諏訪市
諏訪市(長野県)は「諏訪市観光グランドデザイン」を作成するなど、観光業に力を入れている自治体です。諏訪市は「SUWAらしい」観光地に向けた誘客コンテンツを制作する企業や市民団体に補助金を交付しています。
観光マーケティングのテーマは、霧ヶ峰、諏訪湖、商店街、伝統文化、広域連携、温泉、産業、アクセスの8つです。
諏訪市には派手な観光施設や世界的に有名な景勝地が少ないため、観光マーケティングでは郷土愛やおもてなしを全面的に押し出していこうとしています。
熊本県人吉球磨地域
人吉球磨地域(熊本県人吉市)は2020年7月に豪雨に見舞われ、多くの尊い命が失われたほか、国宝青井阿蘇神社、球磨川くだり、球磨焼酎蔵などの名だたる観光資源も被災しました。さらにSLなどの観光列車が走る鉄道網や道路も大ダメージを受けています。
そこで熊本県は2021年に人吉球磨豪雨被災地観光復興戦略を打ち立てました。県を挙げての観光業界マーケティングに取り組み始めたわけです。
マーケティング戦略としては、グリーンリバーパーク戦略、ファミリーナイト戦略、スマートツーリズム戦略を打ち出しています。
グリーンリバーパーク戦略は、須磨川流域の観光復興を目指すものです。川関連のアクティビティを復活させるだけでなく、新規商品の開発も手がけていきます。
ファミリーナイト戦略では、人吉市内の飲食店街に夜のにぎわいをつくるマーケティングを実施します。宿泊滞在型観光への転換を図るべく、ファミリー層の取り込みに力を入れています。
スマートツーリズム戦略は観光事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化です。スマホを使ったLIVEガイドシステムや、おすすめスポットを紹介する取り組み、マイカーに頼らない地域の観光資源を巡るデマンド型交通を構築していきます。
岐阜県下呂温泉
日本三名泉に数えられる下呂温泉(岐阜県下呂市)は、その知名度にあぐらをかくことなく、地道に、かつ長期的な視野に立って観光マーケティング施策を打ち出しています。下呂温泉の観光マーケティングの実力は2022年に「世界の持続可能な観光地トップ100(グリーン・デスティネーションズ主催)」に選ばれたほどです。
その取り組みは数多くありますが、ここでは「エコツーリズム+データマーケティング」を紹介します。
エコツーリズムとは、地域ぐるみで自然環境や歴史、文化を観光客に伝えてく取り組みです。下呂温泉のエコツーリズムの最大の特徴は、観光協会、商工会、旅館組合、ガイド団体、行政機関、研究機関が協力して取り組んでいることです。
そしてこれらの観光関連の事業者や団体、機関が連携したことで、さまざまな情報やデータを共有できるようになりました。これがデータマーケティングへとつながっていきます。
観光事業者・団体・機関は、観光客数、国内外の観光客比率、個人・団体の割合、旅行消費額、来訪者満足度といったデータに基づいて観光マーケティング施策を企画して実行、検証しています。