推し活・オタクマーケティングとは?メリットやり方、成功事例を解説
本記事を読めば、以下のようなお悩みを解決できます。
- 推し活・オタクマーケティングの概要を知りたい
- オタクマーケティングの始め方と成功させる方法を知りたい
- オタクマーケティングの成功事例を具体的に知りたい
また、オタクマーケティングのメリットとデメリットについても解説しているので、あわせてチェックしておきましょう。
推しとは
まずは、オタクマーケティングに関連するいくつかのキーワードの定義を確認していきます。
「推し」の意味を一言で説明すると、人におすすめしたいくらい好きなヒトやモノのことです。
「推し」という言葉は2000年初頭頃から使われ始めましたが、その火付け役となったのがAKB48などを代表とするアイドル文化だと言えるでしょう。
アイドルグループの中で好きな人のことを「推しメン」と呼ぶカルチャーが、他の分野にも波及し、今では幅広く「他人に勧めたい好きなもの=推し」という意味で使われています。
ここまでの説明を聞くと、「”好きなもの”とは何が違うの?」と思われる方もいるかも知れませんが、”人に勧めたいかどうか”が両者の違いを生んでいます。
つまり、推し活をするファンらの行動が自然に新たなターゲット層へのリーチ拡大につながっているのです。
オタクとは
「オタク」とは推し活をする人々・ファンを指しています。近年はオタク文化も一般に浸透していますが、数年前までは少し揶揄するニュアンスを含めて「オタク」という言葉が使われていました。
推しとオタクの違い
「推し」と「オタク」はどちらもにている意味を持つキーワードですが、どういう違いがあるのでしょうか。
両者の意味の違いは下記のとおりです。
推し |
人に勧めたいぐらい好きな人・モノ |
オタク |
他人に勧めたいぐらい人・モノを好きなファン |
つまり、両者の違いは「動作主か、その対象か」になります。
オタクの推し活の概要
では、オタク文化である「推し活」についてより具体的に深堀りしていきましょう。
「推し活」とは推しを応援する活動のことですが、その対象や応援の仕方は多種多様で、マーケティングに使える要素がたくさんあります。
推し活が流行っている理由
そもそも、現代のような推し活ブームは何がきっかけで起こっているのでしょうか。
ひとつ大きなきっかけとしては、「コロナウイルスの蔓延」が挙げられるでしょう。コロナの感染拡大によって世界中で外出禁止令が発令され、日本でも人との接触・外出の機会は極端に減りました。
その際、家で余暇の時間を楽しむためにVODサービスでアニメを見たり、アイドルの歌い手のライブ映像を見始める人が急増しました。
その結果、多くの人が推し活にたどり着いたのです。映像視聴はもちろんのこと、推しのSNSをチェックしたり、推しのグッズを購入することはコロナによっても制限がありませんでした。そのため、これらの行動を自由に余暇の時間で楽しめたのが流行のきっかけになったと考えられます。
このあたりから、「オタク」という言葉に対しても揶揄する意味合いが薄れ始め、「オタ活・推し活は一般的なもの」という解釈が広まりました。
SNSの普及により推し活が増加
また、SNSの普及も推し活文化の普及を後押ししました。
なぜなら、推し活をする人たちがSNSで自分の好きなものを自由に発信し、それに感化され新たなファン層が増えていっているからです。さらにSNSはコミュニケーションの場にもなり、ファン同士の交流にも使われています。SNSの発展も推し活カルチャーが広まった要因のひとつだと言えるでしょう。
推し活・オタクの市場規模
では、具体的に推し活・オタク文化の市場はどれくらいの盛り上がりを見せているのでしょうか。
推し活関連の経済効果は非常に大きいとされており、その規模は数百億円にも昇ると言われています。「便利だから」や「かわいいから」といった理由だけでなく、「応援する」という意味合いが乗っかっている推し活文化では、グッズ収益が非常に大きな支えとなっているのです。
オタクが推し活に夢中になっている背景
世のオタクたちが推し活に夢中になっている背景として、以下の2つの要因が考えられます。
- 推しに認めてもらいたい欲求
- 推しを有名にしたい欲求
ひとつずつ見ていきましょう。
推しに認めてもらいたい欲求
推し活をする1つ目の理由としては、推しに自分の存在を認めてもらいたいという欲求を満たすことが挙げられます。
アイドルのライブでうちわに「こっちを見て!」と書いて、アピールするファンは昔からいましたが、それと根源の欲求は変わりません。
それらがオンライン上などの新たなシーンで、姿を変えて行われています。アイドルグループや歌い手さんなどを推しているファンにとって、推し活を通して推しから認識されることは最大の喜びなのです。
推しを有名にしたい欲求
また、自分の推しを有名にしたいという欲求もあるでしょう。
既に世間で認知されている人やモノだけにオタクがいるわけではありません。むしろ、今はまだそこまで認知されていないニッチなアイドルグループなどにも熱いファンがたくさんいます。
そのようなファンの推し活目的のひとつには、「自分の応援で推しを売れさせたい」という欲求があるのです。グッズ購入などを通してグループ・人を成功させるというプロセスに、ファンの方々はモチベーションを持っていることが多いと言われています。
ここまで、推し活などのオタク文化について網羅的に解説してきましたが、次から本題の「オタクマーケティング」について解説していきます。
オタクマーケティングとは
オタクマーケティングとは、推し活などの熱狂的なムーブメントを利用したマーケティング手法のひとつです。
「推しがコラボしている商品は全部買う!」といったファンが多いところに着目して、ある商品やサービスがそのようなオシとコラボし、新たな顧客層へのアプローチ及び、売上アップを期待して行われています。
オタクマーケティングのメリット
経済効果の大きい推し活に目をつけたオタクマーケティングには、どんなメリットがあるのでしょうか。
コアなファンに価値を届けられる
1つ目のメリットとして、「コアなファンに価値を届けられる」ことが挙げられます。
特定のグループや人、コンテンツとコラボした商品は、それが推しではない人を有る意味で排除するようなマーケティング手法です。
しかし、それでも効果的なのがオタクマーケティング。特定のコアなユーザー層(ファン)に価値を届けられるのがオタクマーケティングのメリットだと言えます。
商品・サービスに信頼を持ってもらえる
また、オタクマーケティングで人気コンテンツとコラボすることで、その商品・サービスへ信頼性を付与することが可能です。
これには、ハロー効果という心理学効果が働いています。CMなどのコマーシャルで人気な女優さんなどを起用することで、消費者に安心感・信頼感を与えられるのです。
その結果、製品の購入に繋がります。推しとなるグループやアイドルなどとコラボするのも、これが理由となっています。
オタクマーケティングの注意点
オタクマーケティングはするべきメリットがたくさんありますが、良い点ばかりではありません。
ここでは、オタクマーケティングをする際の注意点を2つ解説します。
細かい設計や熱量が求められる
オタクマーケティングでは自社製品と推し活対象となっている人気コンテンツをコラボさせて、売上アップを目指します。ただし、目的もなく「人気なアイドルだから…」という理由だけでコラボしていても効果的なマーケティングにはなりません。
オタクマーケティングを成功させるためには、細かい設計やそれを実施する熱量が求められるのです。チーム全員が同じコンテンツを空いているわけではないので、その対象コンテンツについて詳しい人が率先して計画を進めていくと良いでしょう。
ターゲットを間違えると目標達成が困難になる
オタクマーケティングの魅力のひとつに、「特定のジャンルへの情熱を商品・サービスの認知度や売上のアップに活かせる」ことが挙げられますが、時にはそれがデメリットにもなってしまいます。
なぜなら、ニッチを狙いすぎた結果、需要がなくなってしまう(供給過多になる)ことがあるからです。
前述したように、オタクマーケティングであるコンテンツと商品がコラボすると、それを好きではない人を排除してしまいます。
つまり、そのコンテンツを推していない人にとっては「購入しにくいもの」になってしまうのです。それをしてでも一部のユーザーに刺さるマーケティングで売上アップは期待できますが、その対象ユーザーがあまりにも部分的なものだと、費用対効果が下がってしまう危険性があります。
オタクへの主なマーケティング手法
次に、オタクマーケティングの具体例として大きく分けて3つのタイプを見ていきましょう。
コラボカフェ
1つ目は「コラボカフェ」です。
コラボカフェでは推しとなるコンテンツとカフェを組み合わせたもので、推しに関連した店内アレンジを施し、限定の商品やグッズを売るマーケティングです。
コラボカフェは期間限定で開かれるものもあれば、常設の人気コラボカフェもあり、全国的に目にする機会が多いでしょう。
【主なコラボカフェ】
- カービィカフェ
- ミッフィーカフェ
- 名探偵コナンカフェ など
コラボ菓子
2つ目は「コラボ菓子」です。
コラボ菓子はお菓子×推しのコラボで既存のお菓子を新規ユーザーに売り込むマーケティング手法になります。お菓子のパッケージに推しが印刷されていたり、付録で推しのグッズがあるのが一般的です。
この場合のターゲットは、お菓子自体に興味があるユーザーではありません。むしろ、「推しがいるから」「推しのグッズをコンプリートしたいから」という欲求を持つファンをターゲットにしています。
コラボ衣料
3つ目は「コラボ衣料」です。
こちらは推し×衣服の組み合わせで、好きなアイドルやアニメキャラクターなどがプリントされたTシャツなどを販売するマーケティングです。
こちらも推しのグッズを集めたいというファンの欲求を満たすことを目的としており、その過程で「あ、このブランドの服は意外にいいな」と新たな発見を持ってもらうことが狙いです。
オタクへのマーケティングを成功させるコツ
では、オタクマーケティングを成功させるためにはどんなことに注意すればよいのでしょうか。
この項目では本マーケティング手法を成功させるためのコツを計4つ紹介するので、あわせてチェックしておきましょう。
推しを目立たせたプロモーション
大前提として、推し活の主役はあくまで「推し」であることを常に念頭に置いておきましょう。リーチするターゲットはそのオタクになりますが、ファンが求めるのは「推しの活躍」です。そのため、オタクマーケティングでも推しを前面に押し出しましょう。
オタクが満足する商品制作
また、オタクマーケティングを成功させるには、リーチするオタクが満足する商品の制作は絶対条件になります。
その満足する商品と特徴としては、主に下記の3点が挙げられるでしょう。
- 形に残るもの
- 写真映えするもの
- 持ち運びしやすいもの
形に残って、持ち運びしやすく、写真映えするものの代表例としては、「アクスタ(アクリルスタンド)」などが挙げられます。
推しとグッズの関連性
また、推しと商品の間に関連性をもたせることも大切です。そのためには、推しについてよく調べましょう。
ただ、推しの顔写真をプリントしただけの商品では愛を感じませんよね。しっかりコラボする理由を明確にして、オタクが心から楽しめるコラボ商品に仕上げる必要があります。
シェアしたくなる仕組みづくり
また、ファン同士が自身のSNSでシェアしたくなる仕組みづくりも大切です。オタクマーケティングをより成功させるにはファンにその経験をSNSで共有させて、ファンがファンを呼ぶ構造を作ることが必要になります。
推し活・オタクマーケティングの成功事例
さいごに、推し活・オタクマーケティングの成功事例を計9つ紹介します。
具体的な商品名・ブランド名を挙げて紹介するので、自社製品に応用できそうな部分がないか考えながらご覧ください。
1. ロクシタン
ハンドクリームなどで有名な「ロクシタン(L’OCCITANE)」は、映画「おそ松さん」とコラボキャンペーンを実施しました。
保湿バーム「シアバター」は好きなメッセージと色を自由に選んでカスタマイズできる商品です。
それをアイドルグループの「Snow Man」が主演を務めた映画「おそ松さん」とコラボさせ、Snow Manが好きなファンの女性をターゲットにしています。
女性がもともと好きなロクシタンというメーカーと、女性ファンの多いSnow Manをコラボさせている成功したオタクマーケティングの一例です。
2. カラオケパセラ
カラオケパセラでは推し活のオフ会に特化した「推し活パック」というプランを導入し、オタクマーケティングを成功させました。
特定のグループやアニメとコラボしているのではなく、推し活をするファン全体をターゲットに推し活がしやすい環境を提供しています。
【主な特典】
- 推しカラードリンク
- 推しカラーハニトー
- 尊いボタンのレンタル無料 など
3. エスビー食品
エスビー食品は自社製品の「まぜるだけのスパゲッティソース」と、アイドルグループの「INI」がコラボしました。
キャンペーンのテーマは「キミの推しスパは!?」というもので、期間限定で、INIのメンバー写真がデザインされたコラボパッケージで本商品が発売されました。
4. TOWER RECORDS
タワーレコードでもさまざまな推し活グッズを展開しています。もともと、CDなどを販売しているため、推し活をするターゲット層の人が通いやすいお店なので、よりそのような人々に特化してマーケティングしているのです。
推し活に使えるオリジナルグッズ(文房具やうちわなど)を販売し、オタクマーケティングを実施しています。
5. アタック抗菌EXスーパークリアジェル
2020年、花王の洗濯用洗剤「アタック抗菌EXスーパークリアジェル」と世界的に人気なマンガ『ドラゴンボール』の人気キャラクターであるベジータがコラボしました。
また、2018年には『進撃の巨人』のリヴァイ兵長ともコラボしており、定期的に人気なアニメ・漫画キャラクターとコラボしたオタクマーケティングを実施しています。
6. LINEMO
2020年、格安SIMを販売する「LINEMO」がアイドルグループの「虹のコンキスタドール」や「VOYZ BOY」とコラボしました。
コラボしたコンテンツのファンらが、これを機にLINEMOへの乗り換えを検討してもらうことを狙いとしています。
7. REGZA
東芝REGZAは「みるコレ」の機能を使ってオタクマーケティングを実施しています。
「みるコレ」はテレビのREGZAにある機能のひとつで、推しが出ている番組などを見逃さないようにもれなくチェックできる機能です。
推し活をするファンは忙しい生活の合間を縫って、推しが出演する番組を効率よくチェックしたいので、ファンに実用性を提供するという形でオタクマーケティングに成功しています。
8. パティスリーLeitry
埼玉県戸田市にあるスカーフード工業が運営する「パティスリーLeitry」も推し活をするオタクをターゲットにマーケティングしました。
こちらは数種類の色の中からクリームを選んで、推しの色のクレープを手作りで作れるという商品です。
9. SEA BREEZE
デオドラント製品を販売する「SEA BREEZE」では、豊富なカラーバリエーションのボトルで有名ですが、そこにオタクマーケティングを絡めました。
11月4日(いい推しの日)を軸にして商品をPRしました。入れ物に自由に名前をプリントできるため、色と名前を決めて、推し活できるようになっています。