【役員インタビュー COO 佐々木駿】デジタルネイティブ世代をターゲットにしたマーケティングの考え方
前回は、灯白社でCOOを務める佐々木にデジタルネイティブ世代を理解するための前提知識と、マーケティング視点で効果的なコミュニケーション方法についてインタビューしました。
今回は、デジタルネイティブ世代をターゲットとした事業開発やサービスを立ち上げる際のポイントについてお話を伺います。
佐々木駿とは
電通に新卒で入社し、マーケティング部署でデータとインサイトを起点とした事業戦略やコミュニケーション戦略立案に携わる。
その後、電通デジタルの設立と同時に出向し、DX部門で事業戦略策定、デジタルネイティブ世代に向けた新規事業開発、サービス開発・統合コミュニケーションの部署を兼任。
電通退職後は、クリエイターを起用したD2C事業やプロモーション事業を展開する灯白社にジョインし、現在は営業やマーケティング領域の統括を担う。
デジタルネイティブ世代に向けて事業開発を行う際の重要な5つのポイント
ーーこれからデジタルネイティブ世代に向けて事業開発を行うにあたり、重要視するべきポイントを教えてください。
直近4年間で7件の大手企業の事業開発・サービス開発案件(構想含む)に携わりました。
その経験から特に重要だと感じたポイントは次の5つです。
- ①チーム:若手(当事者)and上世代で本気の後見人が揃うこと
- ②アプローチ:新市場×新製品は、必ずアセットありきで考える
- ③参考事例:自社アセットとターゲット世代との接着点の探り方
- ④プロセス:共創=全プロセスにターゲット世代の声を取り込む
- ⑤社内突破:上申時には、数字と生声と、見て・触れるものを
1つずつ解説します。
チーム:若手(当事者)and上世代で本気の後見人が揃うこと
味の素株式会社が設立した「Z世代事業創造部」は、大企業の新規事業の展開例において、多くの企業にとってベンチマークになる事例だと考えています。
大きな組織かつ、Z世代という領域でオフィシャルに組織を立ち上げて1年で商品を出すスピード感のやりきり具合は過去に見たことがありません。
Z世代事業創造部が成功した仮説として、チームの立役者でリーダーを務める唯一の30代メンバー「山田さん」の存在が挙げられます。
山田さんの記事に詳細が記載されているのですが、彼は外資コンサル時代のビジネス分析やM&A/アライアンス実行支援、それ以前には海外事業開発の経験をされています。*¹
その経験と本気で事業を立ち上げようという志に、経営陣の本気の経営戦略が合致した環境下だからこそ、最速アウトプットにつながったのだと考えています。
*¹:参考記事:https://story.ajinomoto.co.jp/report/042.html
味の素さんのような取り組みは、今後他の企業でも増加していくと思います。
それは、次の2つの論理が交わるからです。
- 大企業における若手の退職が増えている/勢いのある若手のガス抜きが必要
- 経営戦略上、新しい収益源やデジタルネイティブ向けの新規事業が必要
一昔前までは「大企業での安全神話」や「終身雇用」が前提になっていましたが、現代においてはそのようなあたりまえが崩壊しています。
そのような中で、ルーティンワークや下積み時代に見切りをつける若者が増加傾向にあると思います。
こうした背景によって、今後多くの会社で関連企業に出向させたり、新規事業検討に若手を積極登用するケースが増えると思いますが、その際にはやはり「本気の志を持った、上の立場の存在」がマストになります。
もちろん、かなりの経験や素質を持った若手人材も存在しますが、いきなり異動してきた社会人3〜5年目だけでは、上を通せる検討深度と材料集めが満足にできないケースが多いです。
一方で、仮に上に通せたとしても意思決定層が本気でない場合、上申フローの途中で塩漬けにされるオチが待っていたりします。
もしくは、およそ3年置きに発生するジョブローテで担当が変わる、上の人が変わるなどの外部要因で話がうやむやになるような結末を何度か見てきました。
モノやプロダクトがいいかに関わらず、そもそも組織的な制約が根深かいため、失敗に終わってしまうことがあるのです。
アプローチ:新市場×新製品は、必ずアセットありきで考える
デジタルネイティブ世代向けの新規事業や新サービスを開発する際は、経営戦略や事業戦略で用いられる「アンゾフの成長マトリクス」というフレームを例に考えると分かりやすいです。
引用元:https://blog.nijibox.jp/article/howto_ansoff_matrix/
多くの企業の場合、右下:若年層(新市場)に対して、新商品/サービスを作ろうとなることが多いのですが、ここで注意するべきポイントは「必ず自社アセットを前提にインパクトがある課題解決や、強いニーズの充足ができるか」を強く意識することです。
過去のプロジェクトで「事業ドメインは一旦無視して、本当に今の大学生が求めているもの、悩んでいる事から考えたい」という条件で出発したことがありました。
複数案の中に意図的に事業シナジーありきのものを忍ばせた結果、最終工程では忍ばせたもの以外はすべて取り下げになった経験があります。
他のプロジェクトでも、資本に余裕があり、M&Aありきで検討するものを除けば、自社アセット評価時や、答申時に事業シナジー要素や調達部分を刺されるケースが多かったです。
顧客視点として思想は素晴らしいのですが、それに寄りすぎても通せません。
私の経験上、デジタルネイティブ世代に向けた事業開発は、単にターゲットボリュームや既存商品の単価感、サービスの課金額などを当てはめていくと、わかりやすく稼げそう!とはならない事が多いです。
そこに加えて、初期から外部調達が多かったり、立ち上げにコストがかかる事業は、余計に通りづらくなる要素です。
ポジティブに見せることにも限界があるので、できるだけネガティブをなくす状態を心掛けることが重要になったりします。
そのため、リスクを下げて行うには、左下:既存製品×新市場(若年層)に近い発想でアプローチすることが望ましいのではないかと考えます。
参考事例:自社アセットとターゲット世代との接着点の探り方
既存製品×新市場(若年層)の発想でデジタルネティブ世代にアプローチできた事例をいくつか紹介します。
まず、江崎グリコ株式会社の「ギフトポッキー」です。
国民的お菓子のポッキーを、スーパーなどの通常接点以外での購入促進やギフトシーンに切り込むために、パッケージや梱包材料を工夫しました。
一部商圏を絞っての展開でしたがSNS上での反応もよく、グッドデザイン賞にも選ばれました。
引用元:https://www.advertimes.com/20210430/article348820/
次は、オフィス家具や文具、事務用品を製造・販売しているプラス株式会社の「COE365(コエサンロクゴ)」というプロダクトです。
プラス社は“エコ”と“エモい”を掛け合わせた“エモロジー”をテーマにした文房具を発売しました。
これも「モノ」自体は今まで作っていたものと変わらないと思いますが、見せ方や既存商品と合わせて提供する体験部分をズラしたことで成立したプロダクトとなっています。
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000065544.html
最後の事例は、カンロ飴でお馴染みのカンロ株式会社がPLAZAとコラボした「EMOTIONAL CANDY」です。
これはフレーバーも含めて新規要素が高いものかとは思いますが、ほとんど自社アセットで完結する内容だからこそチャレンジできたものだと思われます。(デザインや音楽などの仕掛け・体験は別ですが。)
以上のように、「新規市場×新規製品」といきなり意気込むのではなく、「既存の商品や既存のアセットの中で届けられるものがないか」から出発するプロダクトの方が、突破率が高いのではないかと考えます。
私が過去に取り組んだ金融企業の新サービス開発も、大学と親和性の高い既存商品を出発点にし、利便性を高めながら紙ベースでやり取りされていたものをアプリに置き換えるDXプロジェクトとして進行していました。
一方で、プロトタイプを作り数百名規模でPoCまで行ったのですが、ボツになったプロジェクトがありました。
私の経験上、ビジネスモデルの根幹になる要素のうち半分も自社アセットでまかなえていないものは総じて途中で頓挫したように思えます。
引用元:https://www.kanro.co.jp/files/topics/2507_ext_05_0.pdf#page=2
プロセス:共創=全プロセスにターゲット世代の声を取り込む
4つ目に関しては「ターゲットのことは、きちんとターゲットに聞きながら進めよう」という非常にシンプルな話です。
この話の前提として「共創」という言葉の意味を考え直す必要があります。
実際は「一緒にアイディエーションをしただけ」で、その後の過程は大人が進めたケースが多いと思います。それ以外を担当したとしても、インサイト理解時のヒアリングとセットくらいでしょう。
引用元:https://note.com/syun_shun/n/n62a7787279c5
デジタルネイティブをターゲットとした事業開発をする際によく陥るポイントとして、ターゲット当事者の声を聞けない状況下で進めてしまうことが挙げられます。
そうするとほぼ確実に「大人の都合の良い解釈」「ビジネス的な事情による軌道修正」が混入して、もともとあったニュアンスや良さが失われてしまうのです。
そうならないために、具体化や磨きこみの段階などプロセスの随所にターゲットの声を確認できる場を設けることが重要です。
最近では、デジタルネイティブ世代の声をヒアリングするために、産学連携が進んでいるケースが増えています。
または、調査会社やエージェンシーに仲介してもらい、デジタルネイティブ世代をプロジェクトメンバーとして招致したり、一定期間協力メンバーとしてヒアリングに付き合ってもらったりすることで若い世代の声を確認できる環境を整備してもいいかと思います。
社内突破:上申時には、数字と生声と、見て・触れるものを
デジタルネイティブ世代を意識して、サービスや商品を考案すると「今までとは見た目や思想、体験が違うもの」 が生まれます。
時には社内で強く信じられていた物事を否定するような文脈になったり、年の離れた上層部の方からは得体のしれないモノとして受け止められるかもしれません。
そのために、 上申時には下記3つを揃えた状態でぶつけることが突破率を上げるための努力として不可欠です。
- 定量ファクト:事業数字上のシミュレーションや定量的な評価
- 定性ファクト:ターゲットの生声(インタビュー結果)、もしくは現場にターゲットを連れていく。その場で伝えてもらう。
- 誰が見てもわかるモノ:コンセプトビジュアル、サービスプロトタイプ、新デザイン
特に3つ目が重要です。
紙ベースで語るのではなく、できるだけスマホ上で触ってもらったり、実物で見てもらったりしながら世界観を理解してもらうと効果的です。
構想フェーズでは、ドキュメントのまとめで終わることが多いですが、初期フェーズでは簡易モックや簡易プロトタイプなど「モノ」に食い込んだ形で終えることにより2nd フェーズへの移行確率を上げられると考えています。
これから応募してくれる方々へ
ーー最後に、灯白社に興味を持っている人へメッセージをお願いします。
関われる領域は広く、事業領域によって少し差はありますが、灯白社では下記のような成長を約束できると思っています。
①自分でブランドや商品を創れるようになる力
商品企画~製造~販売チャネル設計~物流構築~プロモーションの全てに関われる
②社内外の人を巻き込み、企画を実現する力
企業・クリエイター・社内スタッフに社外業務委託メンバー、あらゆるステークホルダーを巻き込み、0→1、1→100のビジネス推進に関われる
③複数市場の市況や専門スキルを飲み込み、高速で成果を生み出す力
灯白社には広告代理店・コンサル・ゲーム/アプリ・物販など異業種×エース人材が多く関わってくれています。それらの知見を吸収し、使い、次々と収益に繋げていくスピード感や持久力を養うことができます
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