イラストレーター起用するメリットや事例を徹底解説
そもそもイラストレーターとは
イラストレーターは、挿絵や表紙といったイラストを描く仕事を指します。イラストとは一般的に絵を描いた制作物のことです。しかし、イラストレーターが作成するのは下記のような企画意図のあるイラストです。
- 文章を補完して理解を助ける
- ビジュアルで魅力を引き出す
- パッケージの価値を高める
そのため、イラストレーター業務は、企業や個人が企画や制作を進行する際に、必要に応じて商品に入れるイラストを依頼します。
自由にイラストを作成できるケースは少なく、すでにコンセプトや内容が決まっている業務がほとんどです。その上で、イラストレーターは報酬を受け取ってその制作物を納品します。
イラストを描くときは、紙とデジタル作画があり、最近ではデジタル作画がよく使われています。企画によっては、制作環境が先に決まっていることもあります。
また、イラストレーターはイラストを描くだけと思われがちですが、実際には参考資料や実物の観察など描く以外の仕事も業務に含まれています。
イラストレーターの業務内容
イラストレーターはイラストを作成するさまざまな仕事の総称です。そこで、イラストレーターが担当する業務内容について以下に説明します。
挿絵制作
まずは、イラストレーターが担当することの多い挿絵制作の業務です。挿絵の制作とは、小説や新聞、雑誌の紙面に載せるイラストを描くことです。
例えば、ライトノベルやキャラクター文芸小説では、小説の文字だけでなく、作品内に挿絵を挿入します。その挿絵を作成するのは、基本的に小説家ではなく、別のイラストレーターです。
もちろん、イラストレーターの業務内容は、挿絵だけではありません。実は、イラストレーターの中でも挿絵に特化したクリエイターのことを「挿絵作家」と呼びます。
そして、挿絵の入るメディアは、手書きの絵に限らず、図説や加工写真、デザインなどもイラストに含まれます。そのため、掲載する紙面の種類や制作する内容によっては異なるスキルやツールが要求されます。
イラストレーターに挿絵を依頼する際は、相手の挿絵の技術やスキル、制作環境を確認しましょう。
表紙制作
表紙制作は、本やカタログなど書籍の表紙を作成する業務です。イラストを入れることで表紙を見た人の注意を引き、手に取りやすくします。
タイトルだけのシンプルな書籍の表紙もありますが、中にはイラストレーターが描いた人物や動物、物の絵を入れる表紙もあります。
例えば、漫画や小説の雑誌表紙には、キャラクターやグラビア写真を入れたものが多く、ビジネス書やハウツー本では幾何学図形や風景、もの・人物・動物を必要に応じて組み合わせたイラストが付いています。
近年では、ビジネス書にもキャラクターを入れた書籍が増えており、漫画雑誌以外でも人物・キャラクターのイラスト制作業務が増加しているのです。
表紙と挿絵の制作上の大きな違いは、挿絵が白黒を基本とするのに対し、表紙はカラーが基本となることです。そのため、着色の技術やデジタルツールの操作ノウハウも必要になります。
スタンプ制作
スタンプ制作は、SNSやコミュニケーションアプリのメッセージ送信を使用する際のスタンプです。
例えば、日本ではLINEやChatwork、Discord、ショートメール・SMSなどでスタンプが使われています。
スタンプはメッセージ内容や表現したい感情に合わせたイラスト(絵+文字)を作成することが多く、細かく指定して発注することが重要です。
また、スタンプは似たものをたくさん作る差分の作成もありえます。特にLINEのスタンプでは複数のイラストを最低8枚以上、最高40枚が1セットですから、1枚ずつの作成ではなく、まとまった枚数の作成が必須です。
ゲーム等のイラスト制作
ゲーム等のイラスト制作は、ゲームの中に出てくるイラストやイベントスチルなどを作成する業務です。
ゲームのジャンルは多岐に渡るため、近年流行のスマホゲームやネットゲーム、家庭用ゲームソフトなど、似たような制作業務でも内容が異なります。そのため、必要となるイラストレーターの技量や経験値も変わってきます。
例えば、カードイラストに美少女系のキャラを採用したゲームやTCGは、画面内の通常イラストとは差別化した特別な美麗イラストを用意する必要があります。
制作現場の要求するイラストを作成できるイラストレーターを探します。
継続的なゲーム配信で内容をバージョンアップするときは、同一のイラストレーターや類似の人を確保し、絵柄が変わらないようにする工夫も有効です。
パッケージ制作
パッケージ制作は、商品や製品のパッケージデザインをイラストで作成する業務です。
例えば、牛乳パックには牛の絵が付いていますし、ポケットティッシュには何かしらのイラストが付いていることがあります。
他にも、包装紙・ビニールなどに消費者の購買欲を高めるイラストが描かれています。これらは、商品コンセプトをイラストで表現したパッケージ制作です。
パッケージ制作の場合、企画した企業側がある程度イメージをイラストレーターに事前の伝達をする必要があります。
イラストレーターに1から考えさせるのではなく、すぐにラフが描けるくらいのコンセプト・要点を整理して伝えましょう。
ポスター・チラシ制作
ポスター・チラシ制作は、ポスターやチラシのイラストを作成する業務です。
例えば、求人やイベント広報、広告などを載せるポスターは、イラストを載せて街や店舗、オンラインで掲載します。
チラシの場合は、街頭掲載に加えて、配布やデジタル配信などユーザーが見る機会も多岐にわたる広告形態です。
多くのユーザーが目にするポスター・チラシで注目を集めるイラストにすることが要求されます。
そこで、企業は挿絵やゲーム等のイラスト制作技術とはまた違った、集客用のイラスト制作技術・スキルを持つイラストレーターを探すことが必要です。
イラストレーターを企業が起用する理由
ここで気になるのは、イラストレーターをあえて企業が外部から探して起用する理由です。理由は以下の4つがあります。
- イラストによる商品コンセプトやイメージを伝える
- ペルソナにアプローチしやすくする
- 類似商品やサービスを他者と差別化する
- 企業のイラスト内製の難点をカバーする
ペルソナにアプローチしやすくする理由については後ほど説明しますが、イラストで伝わりやすくなる理由は割と明瞭です。イラストにより視覚的な理解の手助けができます。
他社との差別化についてもイメージの一新や流行の反映などが目的となります。しかし、内製の難点をカバーすることについては理由がわかりにくいため少しだけ説明します。
もともとイラストレーターをアウトソーシングするということは当然ながら探す手間と時間、外注費用がかかります。それでもイラストレーターを企業が起用する理由は、イラスト要員の人材を社内で抱えて維持することの難しさや外注することで得られるメリット、コストパフォーマンスの高さなどがあります。
例えば、ポスター・チラシ制作のできるイラストレーターを確保した場合、業務経験がそれ以外にないと、パッケージ制作が難しかったりするケースです。できたとしても経験値の差があり、ポスター・チラシ制作ほどの完成度が得られないことも考えられます。
必要に応じてイラストレーターはその都度確保し、必要な期間だけ契約することでさまざまなメリットが生まれるのです。
イラストレーターを起用するメリット
ここからは、イラストレーターを起用するメリットを3つ説明します。
拡散力を武器にできる
イラストレーターは、いまの知名度や技術に至るまでにさまざまなファンや取引相手と交流しています。
知名度の高い有名なイラストレーターほどその傾向が高く、拡散力を武器にできるというメリットを持ちます。企業が独自に既存イラストレーターの拡散力を1から新規で得ようとすれば、年単位の時間や相応の費用がかかります。
最近ではSNSやイラストサイトを活用して商業進出前からファンが付くケースも増えているため、新人イラストレーターであっても拡散力を十分に持っていることがあるのです。
そのため、イラストレーターの拡散力と広告の相乗効果で自社のブランド・商品の知名度を高めて、新規顧客にアプローチすることができます。
口コミ創出により売上アップが期待できる
2つ目のメリットは、イラストレーターを起用することでその話題性やイラスト自体に口コミが付くことです。その結果、売上の向上が期待できます。
全くの新商品や知名度の低い企業が新たに出すブランドは、基本的に集客がしにくいことで知られています。
広告や宣伝を出したとしても新規顧客獲得のハードルは依然として高いでしょう。顧客が集まらなければ、売上にも繋がりません。
しかし、イラストレーターを起用したことを契機に、口コミが生まれて話題性が広まれば、売上アップが期待できるのです。
ペルソナへアプローチしやすい
3つ目のメリットは、自社商品のターゲットユーザーに対して、ペルソナを明確にした上でアプローチできることです。
通常、商品広告は具体的に年代や性別、趣味・関心事、地域など「セグメント」を細かく分類しないといけません。
しかし、イラストを付けることで見た人がペルソナを特定しやすくなります。
ペルソナにマッチしたイラストでの宣伝は、ターゲットユーザーを購買行動につなげるのに有効です。
イラストレーターを起用する注意点
技術やスキルが自社にマッチしたイラストレーターを見つけて起用する場合には、以下の3つの注意点があります。
必ずしも依頼が通るわけではない
まずは、起用するイラストレーターに依頼を打診し、先方に断られるケースです。
断られる理由はいくつかありますが、代表的なものとしてはスケジュールや合わなかったり、すでに仕事を抱えていて依頼自体が受けられなかったりするなどです。他にも以下のような理由があります。
- 報酬条件や契約内容が希望に沿わない
- 依頼内容・企画がイラストレーターの感性や趣向に合わない
- 競合他社の仕事をすでに受けている(契約で縛られることがある)
特に、趣味ではなく、ビジネスとして依頼を受けるイラストレーターは、イラスト作成時に細かな作業部分を取り決めた報酬を設定しています。
そのため、自身の希望する報酬や契約にならない場合は断られるでしょう。
また、契約に「競合他社から受けたイラストの仕事を受けない」ことを制約することがあります。
漫画雑誌のイラストレーターなどに多い契約内容で、イラストレーターがその雑誌の顔になるからこその制限です。したがって、依頼が必ずしも通るわけではありません。
コミュニケーションでトラブルが発生する可能性がある
2つ目の注意点は、コミュニケーションに問題が生じるなどして、依頼進行に不都合が出ることです。
コミュニケーションのトラブルで多いのは認識の不一致で、企業側の説明不足やイラストレーター側の確認ミスなどで起こりやすくなります。
たいていは、コミュニケーションが不足することでトラブルが発生します。
例えば、イラストが企業の要望通りに作成されず、再度の制作を余儀なくされた場合です。
- 希望の完成イラスト像や注意点を伝えられなかった(企業側)
- 希望するイラスト内容詳細の伝達に齟齬が生まれた(イラストレーター側)
これらの場合、問題が拡大すると責任の所在がどちらにあるか議論が紛糾することも考えられます。
特に料金設定で作り直しに追加費用がかかる場合、企業としても負担が大きいため、十分にトラブル発生の可能性を考慮してコミュニケーションを取ることが大切です。
炎上リスクを考慮する必要がある
3つ目の注意点は、イラストレーターやその制作物を原因とした炎上リスクがあることです。
例えば、イラストが他社のイラストと似ていて、パクリや著作権を指摘する声で炎上するなどです。
他にも、特定の人物を揶揄する、社会的な差別を誘発する・内容を想起させる、炎上しそうな内容が含まれるなどです。
イラストの炎上が原因で企業イメージが低下することもあります。十分に注意が必要でしょう。
また、炎上リスクはイラストそのものだけでなく、イラストを制作したイラストレーターの発言やその人物が所属する企業の情報発信によっても炎上します。描いたイラストを下げざるを得なくなる、ブランド価値が下がることなども十分に注意しましょう。
有名イラストレーター起用事例
魅力を高めたり、集客力を上げたりするためにも、経験や実績が豊富な有名イラストレーターに依頼したいところです。
そこで、起用事例として有名イラストレーターを以下に紹介します。
白根ゆたんぽ
白根ゆたんぽは、フリーのイラストレーターです。イラストの講師の経歴があります。柔らかい女性がや線の少ない人物イラストを描いており、主な起用事例として表紙イラスト(カラー)、パッケージイラスト・広告、CDジャケット、挿絵などがあります。
さまざまな商品やグッズのイラストを描いた経験があり、すでに多くのファンを得ています。
なかでも「別注・生原酒 ボトル缶」のコラボイラストの実績は有名です。商品宣伝やコンセプトを伝えるイラストや表紙を依頼する場合におすすめです。
サンレモ
サンレモは、大阪在籍のレトロな雰囲気の人物を描くイラストレーターです。起用事例として、ホリプロのオーディションポスター・チラシのイラストを担当し、多くのカラー商品イラストを経験しています。
例えば、ブランドや雑誌のコラボ、広告、飲料パッケージ、アパレル、グルメ、イベント関連の実績などです。元気や活力が感じられる明るくポップな絵を依頼する場合におすすめです。
Saki Morinaga
Saki Morinagaは、福岡県出身で東京を中心に活動するイラストレーターです。彼女のイラストは独自性とシュールさを兼ね備えた自由な絵柄で、丸みのある線に特徴があります。そのため、見ている人の気持ちを軽くし、前向きな気分にさせます。
起用事例は、挿絵、CM、ロゴ、広告、ネットコンテンツなどです。例えば、ニットボディブランドや靴下屋などアパレルのPB商品イラストを担当しています。
他にもガス会社のCMに使うイラストやビームスのポスターイラストなどの実績が代表的です。
REDFISH
REDFISHは国内外(日本・韓国)で活動するイラストレーターです。
海外絵本のキャラクター・バーバパパからインスピレーションを得ており、ゆるい絵本のようなイラストが特徴です。ファンの中でも10代が多く、若年層女性に人気を集めています。
紙とデジタルの両方を使い分けて線入れまでは紙に、カラーはデジタル処理です。そのため、繊細なアウトラインの人物描写や世界観を引き出します。
起用事例はテレビ番組のステージロゴやアーティストデザインなどです。イベント系のイラスト依頼をしたい企業におすすめです。
火曜び
火曜びは、昭和後期の昔ながらのレトロアニメを想起させるキャラクターを描くイラストレーターです。
昔の絵柄そのままではなく、現代の目線にピントをあわせています。そのため、レトロ好きなファンを取り込んで注目を集めているのです。
例えば、野球チームのコラボTシャツのイラストやCDジャケット、アパレルブランドなどのコラボ起用事例があります。レトロチックなイラストを依頼したい企業におすすめです。
かめもときえ
かめもときえは、宮崎県を中心に活動し、KAMENOCO design.を立ち上げて個人でデザイン業務を行うイラストレーターです。デザイン業務以外にも、イラスト業務や似顔絵・絵本作りなどもしています。
起用事例は、パッケージイラストの制作やニュース情報のロゴ制作・キャラクターデザイン、ライブグッズイラスト、イオンの宣伝・広報イラストなどです。
子どもでもコンセプトがわかりやすい可愛いイラストも多いため、情報伝達や理解を促したいイラストの依頼に向いています。
ery
eryは、音楽活動やラジオ、デザイナーの仕事もしている東京都出身のイラストレーターです。ポップで明るく、キュートな絵柄のキャラクターが特徴です。
また、人物以外のイラストも積極的に描いており、アパレルグッズのイラストにも動物のデザインが起用事例といえます。
起用事例の中には、クライアント依頼の展示やイラスト制作物を作り、それ以外のデザインのノウハウを生かした仕事の経歴・実績も多数です。
アパレル業界や音楽、デザインに関連したイラストの制作を依頼する場合におすすめです。
NAKAKI PANTZ
NAKAKI PANTZは、個展を契機に活動を開始したイラストレーターです。鋭い線にスタイリッシュで格好良い女性の絵柄が特徴です。
起用事例にアパレルブランドのイラストや広告、MVのデザインなど、コラボが多くあります。例えば、古着屋9090やjouetie×NAKAKIPANTZ、hoyuサマーキャンペーンなどです。
そのため、ファッションや音楽・アーティスト関連のイラスト業務を依頼するのにおすすめです。
電Q
電Qは、ニューレトロなアニメチックの人物を描くイラストレーターです。当時のファッションを想起させる服装のまま人物画を描いており、80~90年代の時代感覚を現代に蘇らせます。
起用事例にはCDジャケットのコラボが多数あり、音楽系を中心にアパレルやファッション誌、広告などのイラストを手掛けています。
イラストをSNSでも掲載しており、レトロ好きな若年層ファンが多いイラストレーターです。
そのため、拡散力を武器にして、独自のレトロな世界観を表現するイラストを「コラボで使いたい」「CDジャケットを作りたい」という場合におすすめです。